グランプリ 株式会社水田製作所 No.2230 KIBAN LIGHT SERIES
この照明は、銅板を基盤として使い、配線のないシンプルで素朴な照明器具である。これを製作した水田製作所は、基盤のアッセンブルをする会社で、照明メーカーではない。だからこそ、このKIBAN LIGHT SERIESが生まれたと言っても過言ではないだろう。
デザインは正にミニマル。薄い板状のプレートと細い支柱のみ。天板の下側に基盤で見る回路とLED素子がついている。その名の通り、基盤が傘となって下方へ光っている。これは今までにないタイプのプロダクトではないだろうか。素材の銅もクリアを掛けなければ経年変化をし、風合いのある銅になっていくそうだ。ミニマルながら素材の特徴をうまく活かしたプロダクトである。しかし、その完成度はもう一歩という感じではあるが、未来への可能性を強く感じるプロダクトであり、その期待感が今回の受賞に繋がったのだろう。ぜひ、さらにプロダクトを進化させ、より美しく賢さを感じるプロダクトに育てて頂きたいと願います。
審査員 JCD理事長 窪田 茂
準グランプリ DNライティング株式会社 No.2203 DNL 細型フレキシブルLEDモジュールFXYシリーズ(FXYS-LED、FXT-LED)
設計者の多様な要望に応えてフレキシブルに形を変え、意図した形状に美しく収まってくれるこのLEDモジュールは、作り手の想像力を大きく膨らませる力を 持った製品である。細かいピッチで切断可能な為、64種もの豊富な長さバリエーションを作り出し、施工性にも大変優れている。細部の造り込みも美しく、高い解像度を 持った開発チームの妥協のない取り組みの賜物であると感じる。精緻なディテールと、様々な場所にそれを持ち込むことができる高いユーザビリティの双方を兼ね備えた 製品計画が高く評価されました。
ゲスト審査員 倉本 仁
プロダクトデザイナー
JIN KURAMOTO STUDIO代表
武蔵野美術大学非常勤講師
準グランプリ 株式会社ワイ・エス・エム No.2242 and-on アンドオン
まず一見して、絵力があると思いました。それはもちろんデザインの力でもありますし、そのイメージを壊さずきちんと製品に落とし込んだ、ワイ・エス・エムさんの技術力や努力の賜物と思います。伝統工芸の小川和紙を使用した柔らかでたおやかな灯りを、ビス一つなく仕上げられているところも素晴らしいです。縦置きの際、不安定にならない厚み35mmというギリギリのラインを攻めた潔さも感じました。そこにはもちろん、フレームの少しの歪みも許さない技術力の高さが伺い知れます。今回初めて審査をさせていただきましたが、新しい技術を取り込んだハッとさせられる製品や、妥協しないものづくりの姿勢を感じさせる企業が多く、私自身大変勉強になりました。素敵な機会を頂きありがとうございました。
ゲスト審査員 白木ゆみ香
ファッション&プロダクトデザイナー
YUMIKA Design代表
杉野服飾大学特任准教授
サステナブル・プロダクト賞 and C株式会社 No.2212 スカンディアモス
サステナブル・プロダクト賞に輝いた「スカンディアモス」は、評価に値する要因として2つが挙げられるだろう。一つはその成り立ち。スカンディナビアの森でトナカイの餌として自生していたモスが近年、トナカイの減少により消費されず増殖し、木の成長、森の維持を妨げる存在になってしまった環境問題の解決であり、もう一つは、製品として多くの優れた性能を持っていることにあると思う。調湿効果・耐火性能・吸音機能・防音機能・脱臭機能また口に入れても害のない安全性などだ。ましてやメンテナンスフリーで半永久的に使用できるのはまさに優れた持続可能な商品だと思う。そして何より自然由来のこの製品は人々の日々の生活に精神的な潤いをももたらすものではないかと考え、このような問題解決しながらも製品が開発される循環こそがこれからも大切なことなのではないかと思う。
審査員 JCD理事 折原美紀
総 評
2021年に続いて「JCDプロダクトオブザイヤー2022」の審査に参加させていただきました。 時代の要請であるサステナビリティー(持続可能性)や、コロナ禍を経た後の新しい働き方、住まい方など、製品として考慮しなければならない要件がどんどん複雑化してきています。さらに、素材などのコストアップも顕著です。
メーカーの製品開発はますます難しくなりましたが、そんな厳しい環境であっても、「美と利と知」を体現するような製品が多く生まれてくることを願っています。「美」とは美しさや完成度。「利」とはベネフィットの意味で、機能性やコスト。「知」は知性で、社会的使命を正しく果たそうとする姿勢です。これらはなかなかそろわないものですが、今回の受賞作品にはこの3つの要素が色濃く感じられたと思います。
特別審査員 花澤裕二
株式会社日経BP社「日経デザイン」編集長